迷ったらカレー

技術系の雑多なブログ

新卒入社したリクルートを退職しました

2020年2月末日付けで、新卒で入社したリクルートを退職しました。2016年の4月に入社したのでほぼ4年間いたことになります。遅ればせながら、退職エントリというやつを初めて書いております。在籍中は本当に多くの方々にお世話になりました。まずはじめに4年の間に関わり一緒に仕事をさせていただいた方々に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

さて、このエントリを書くにあたって、エモ100%のポエムにするというのも考えたのですが、そういうキャラでもないので真面目に書くことにします。 書いているうちに熱が入って結構エモくなってしまいました。

内容はオーソドックスに

  • なぜリクルートに入ったか
  • どんな仕事をしていたか
  • 4年間で変わったこと
  • これから何するの

という感じです。

なぜリクルートに入ったか

リクルートとの初めての接点は、大学院M1の冬にふらっと参加したインターンでした。 SFCという少し変わった環境で学部の頃から好きなことしかしてこなかったので、そろそろ外の世界を見ておかないとマズイのでは...という理由のない危機感に背中を押され、『インターン、エンジニア、報酬あり』というなんとも雑な条件でGoogle先生に尋ねて、一番上に出てきたのがリクルートインターン募集サイトでした。僕はTwitter耳年増だったので「学生エンジニアは搾取される立場にある」という認識が当時からあり、少なくとも報酬を出す会社というのがインターン先を探す一つの指標になっていました。いま思い返しても、正しい指標だったと思います。労働には対価を。当たり前のことです。学生の身であるからこそ、当たり前のことを当たり前にできる会社で働きたかったのです。

いざ参加してみると、思った以上にキャラが濃い人たちが同期に揃っていて、すごく楽しかったのを覚えています。いい意味で鼻っ柱をおられたというか、自分がいかにエンジニアとしてまだまだ学ぶことが多いかということを自覚させられました。その後、たまたまリクルートテクノロジーズでOJT的に学生バイトをやらせてもらうことになり、2ヶ月ほど機械学習とか統計とかを仕込んでもらったりしました。この時点でだいぶリクルートのことが好きになっていて、思い浮かぶ進路はD進かリクルートに就職か、という状態になっていました。

そうこうしているうちに縁あって新卒の選考も通り、最後まで迷ったものの、未来が予想できない方ということでリクルートへの就職を選びました。SFCでの教育の賜物なのですが、考え抜いた末に迷ったら、どうなるか予想できない方を選ぶと決めています。カオスに飛び込む、というやつです。たぶんその方が面白くなるので。

どんな仕事をしていたか

入社してすぐは、仕事がありませんでした。たしかにカオスを望んだのは僕ですが、これはさすがに予想を上回っていました。アサインされるはずだった開発プロジェクトが吹き飛んだ結果、入社早々社内ニート確定という珍事。新卒に向かって「仕事ないんだけど、何やりたい?」は相当ロックだったと思います。とりあえず大笑いして、入社してよかったと思いました。

もともとタスクを割り振られて何かするよりは、自分で課題を見つけて提案する方が好きだったので、これ幸いと自分でできそうなことを探し始めました。僕が配属されていたのは、アルバイトや中途などを対象とした求人サービスを扱う部門でした。サービスのシステムは、かなりレガシーかつ大規模だったので、おいそれと新卒の若造がコアな部分に触れるようなものではありませんでした。

それならば、比較的ライトに試せるWebのフロントエンドで、まだやっていないことをやれないかと模索しはじめ、ユーザの行動データを使ってUXを改善する試みなどを起案したりしました。起案するときにプロトタイプをさくっと作って見せていたのですが、その甲斐あってか当時の上司が面白がってくれて、実際のサービスで試してみることになりました。そのうちに一定の効果がありそうな施策があったりして、既存の開発チームとは別に遊撃部隊として座組みを作ってもらうことになりました。

また一方で、2年目の半ばくらいからは、社内の強いエンジニアの先輩のもとでバックエンドの開発案件にもアサインしてもらいちゃんとしたシステム の作り方をみっちり仕込んでもらいました。今思い返してみても、かなり恵まれた環境で仕事をしていたと思います。好き勝手させてもらう一方で、基礎となる考え方や経験を仕込んでもらっていたのですから、至れり尽くせりとはこのことです。

そのうちに「Web周りの改善やってる人」みたいな認識をもらいはじめ、レガシーなWebフロントエンドの表示速度改善をする案件もやりました。これはCODEZINEさんで記事にしていただきました。

codezine.jp

いろいろな開発案件に取り組んでいるうちに興味がうつっていき、組織としてパフォーマンスを出すために、どのような技術的アプローチができるかということを考えるようになっていました。制約条件が多い中での開発において、最もネックになっているのが組織構造や組織間の力学の違いであるように見えたのです。優秀な人が多いのに、それほどパフォーマンスがでないのはなぜか。その原因を取り除けば、もっとプロダクト開発を加速させられるのではないか。そんなことを思って、データサイエンティストとエンジニアが連携してプロダクト開発できるように、機械学習案件用のAPI基盤を作って検証させてもらったりもしました(障害起こしてすみませんでした)。

最後の一年弱は、運良く社内新規事業案件にアサインしてもらって、社内選りすぐりのプロフェッショナルたちと一緒に仕事していました。これほどに技術レベルが高い人たちばかりに囲まれて仕事するのは初めてだったので楽しくて仕方がありませんでした。また、それまで既存事業の改善一筋で、新規事業として新しい価値を模索する経験はしていなかったので目新しいというのもありました。ただ、一方で違和感も感じていました。まず新規事業とはいえ、社内のプロジェクトなので、大企業の力学に囚われる、ということについてです。既存事業に比べればしがらみは少ないものの、やはり意思決定の自由度とスピードがネックに見えました。また、当然のことながら事業としての新規性や価値が企業の既存アセットとシナジーを生まなければなりません。これは、既存アセットのリソースを優先的に利用できるという利点と背中合わせではありますが、そもそも既存アセットの有用性に強く依存するリスクがあること、また事業としてのポジショニングが難しいということは間違いありませんでした。そして、もう一つの違和感はおそらく温度感だったと思います。メンバーは間違いなく優秀でした。ビジネスサイドも、開発サイドも、いい人が揃っていたと思います。ただその一方で、熱量は足りていなかったように思います。それは僕もです。良くも悪くも社内新規事業なので、ポシャったとして、明日飯が食えないかもしれない、とはならないわけです。そのどこか他人事のような安心感が、少なからずあったように思います。僕のリクルートでの最後の仕事は、とある新規事業を看取るおくりびとでした。

4年間で変わったこと

この4年間で変わったのは、一言でいえば「良いシステム」というものの捉え方です。

学生時代はひたすら研究をしていたので、この頃はシステムは新たなアイデアを実装するための道具に過ぎませんでした。良いシステムとは、必要十分にアイデアを表現し動いているもののことでした。

社会人になって、システムの生む価値の方向性を意識しはじめ、誰のためのシステムか、ということを考えるようになりました。具体的には、技術的なアプローチで、実際のユーザにより良い体験を届けたいということ、またビジネスに貢献したいということを考えはじめました。良いシステムとは、期待した価値を誰かに届ける手段でした。

そして、組織のパフォーマンスなどに目が向きはじめたあたりからは、人間の組織とそれを活かすための仕組みという意味で、システムのことを考えるようになりました。結局のところ、システムは人間と共存できなければいけません。良いシステムとは、という問いに対する今の僕の答えは「人間の営みに即した仕組みのこと」です。人の行動が変われば、システムもまた変わる必要があります。それはビジネスフェーズであったり、プロダクトの性質であったり、中の人のスキルレベルであったり、はたまた政治的な理由によるかもしれません。とはいえ、人の行動には目的があります。正しい目的を設定することができれば、自ずとそれを達成するための行動は決まってきます。良いシステムは、その行動を促し、助け、ときに戒める仕組みです。また、時間軸上のライフサイクルを意識するならば、徐々に移り変わる目的とそれに付随する行動の変化への対応も必要です。

この4年間で「良いシステム」を作りたい、という気持ちは変わっていません。ただ、いまは、人間の営みに寄り添い続ける仕組みを作っていきたいと考えています。

これから何するの

3月からは、リクルートの同期が立ち上げた Boulderというプロダクト検証フェーズのベンチャーでVPoEとしてエンジニアリングのリードと開発体制づくりをやっています。動きが激しいフェーズにおいて、急速なプロダクトの進化を支えるシステムと強い開発チームを作るべく日々楽しく働いています。詳細についてはまだ1文字も書いてない入社エントリで書く予定です。許して。

結びに

僕個人として、新卒でリクルートに入ったことはとても良かったと思っています。

就職先を考えている前途有望な学生や、転職を考えている優秀な方に出会った時は、必ず勧めてみるようにしています。いろいろ思い通りにならなかったり大変なことはありましたが、一度入ってみるのは間違いなく面白いと自信を持って言えます。それほどに優秀な人材が揃っていますし、様々なチャレンジや学びの機会がゴロゴロ転がっています。

『お前はどうしたいの』という有名な語録ネタがありますが、この問いは自分にむけてこそ価値があります(決してマウンティング用の便利フレーズではありません)。なんでもできる会社だからこそ、なぜ、何をしたいのか、自分がどうなりたいのかは常に考えていました。正直これから先のことは今まで以上にわかりませんが、この習慣はきっとこれからも僕を助けてくれるはずです。

別れの言葉を考えていましたが、きっとさようならではないですね。出戻り大歓迎の文化だから、何かの拍子に気付いたらまた中の人になっているかもしれません。その未来がくるかはわかりませんが、社会人としての原点が、自然とそう思える場所だということは、かけがえのない財産だと思っています。

ありがとうリクルート
またいつか、まだここにない出会いがあれば。